室生犀星『我が愛する詩人の傳記』

我が愛する詩人の傳記 室井犀星 カバー破れ有シミ日焼け強ACSノーブランド品Amazon ここ3年半ほどの間、あれこれものを考えるにしても、手もとにある古書雑書の類と、そこから派生するとりとめない問いに関して求めて読むものをベースにして算段することしか…

ルーエル・デニー/石川弘義・訳『ミューズのおどろき――大衆文化の美学』

ミューズのおどろき―大衆文化の美学 (1963年)作者:R.デニー紀伊国屋書店Amazon ああ、もうほんとに老害化石脳なんだな、と、われながら思い知ることが日々、増えてゆく。 たとえば、いまどきの人がたの言う 「サブカル」と「おたく」、その違いがわからない。9…

花田清輝『さまざまな戦後』

さまざまな戦後 (1974年)作者:花田 清輝読売新聞社Amazon 花田清輝、というのは最近だと、どうなんだろう。やはりものの見事に忘れられているひとり、になるのだろうか。 まあ、かの吉本隆明との大喧嘩の顛末が、高度成長期の上げ潮の時期にあたってしまって…

堀切直人『浅草』

浅草作者:堀切 直人栞文庫Amazon浅草 大正篇作者:堀切 直人右文書院Amazon浅草―江戸明治篇作者:堀切 直人右文書院Amazon浅草 戦後篇作者:堀切 直人右文書院Amazon 自分だけの大事な書き手、というのが、いる。 誰もが知っているのではない。言及されているわ…

橋本治『完本チャンバラ時代劇講座』

完本チャンバラ時代劇講座作者: 橋本治出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 1986/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (11件) を見る*1 *2 ひとつの本を繰り返し巻き返し読む、ということも「読む」のひとつであることが、どうも最近は意識…

源了圓『義理と人情』

義理と人情―日本的心情の一考察 (1969年) (中公新書) 作者: 源了円 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1969 メディア: 新書 クリック: 5回 この商品を含むブログ (3件) を見る 新書も文庫も、単にその判型だけの意味にしかならなくなって、中身もまた以前…

つのだじろう『ばら色の海』『サムライの子』

*1 *2 つのだが「サムライの子」を描く前年、1961年1月から7月にかけて同じ『なかよし』誌に連載し、その年の第二回講談社児童漫画賞(現在の講談社漫画賞)を受賞した「ばら色の海」は、横浜のダルマ船に住む水上生活者の子どもたちに取材した作品で、すで…

サトウハチロー『僕の東京地図』

*1 *2 サトウハチロー―僕の東京地図 作者: サトウハチロー 出版社/メーカー: ネット武蔵野 発売日: 2005/08/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 5回 この商品を含むブログ (8件) を見る *3 ● 古書の書評、というのはあまり見たことがない。いや…

長谷川伸『石瓦混淆』

石瓦混淆 (中公文庫) 作者:長谷川 伸 中央公論社 Amazon いつかいつかと思いつつ、棚上げにしていた仕事がそこここに散らばったまんま、気がつけば歳を食っている。なんのことはない、もう半世紀も生きたことになっちまってる。馬齢を重ねて、というもの言い…

吾妻光良 『ブルース飲むバカ 歌うバカ』

ブルース飲むバカ歌うバカ 作者: 吾妻光良 出版社/メーカー: スペースシャワーネットワーク 発売日: 2006/12/15 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 11回 この商品を含むブログ (13件) を見る 吾妻光良、かあ、いとなつかしや。 77年の春、早稲田は八号…

片岡義男『10セントの意識革命』

僕が知っている日本は、戦後からだ。しかし、社会的なつながりを多少とも持った上での体験は、高度成長の急坂の途中あたりからだ。戦前や大正、そしてそれ以前について、僕はほとんど何も知らない。 なにげに片岡義男がすごいことになってる、ってのは以前か…

谷川雁 「びろう樹の下の死時計」

はじめ私は道ばたの草むらにつないである牛の傍をすりぬけたとき、その牛がまじまじと私をみつめるのに閉口した。「内地」ならば、ふてくされて知らぬ顔の半兵衛をきめこむのを得意としているこの獣がゆっくりとみつめる大きな眼には、なにかお互いの寂寥感を…

稲垣恭子『女学校と女学生』

私にとって、最も身近な「女学生」は母である。吉屋信子と夏目漱石を愛読し、手紙やスピーチに独特の感情表現を込め、ミッション・スクールと修道院に憧れ、女学校時代の友人とファーストネームで呼び合う「万年女学生」の母に対して、面白さと同時に身内な…

たま『さんだる』

川の中をオレンジでおなかをふくらませた 女たちがぷかぷか流れてる ヘビー級のチャンピオンがそれを見つけては サンドバッグがわりに殴ってる 80年代的なるもの、というのがあるとして、それは音楽やマンガに最も濃縮されて、ということは誰の目や耳にもわ…

西部 邁+平岡正明+栗本慎一郎 『情念と幻想――その現実論』

死者の総意に基いてプロレタリア革命を行う、これがぼくの立場。――平岡正明 桝添要一が厚生労働大臣になって、テレビその他に露出することが多い。めっきりハゲて白髪も増してオッサン面になったのを眺めながら、ふと、栗本慎一郎のことを思い出した。 大学…

平田 寛 『失われた動力文化』

ところがここに、労働と技術を尊重してそれを実践した集団がいた。それは、仕事で手をよごすことをけがらわしいとみなしていた貴族や知識人がつくった修道院である。そこは、禁欲を守り、清貧にあまんじ、熱烈な信仰に燃えた修道士たちの自給自足の場であっ…

平岡正明『ボディ&ソウル』

知性はその低次の段階では二枚目としてあらわれ、やがて発展して三枚目にいたる。ついに最高の発展段階として実現するものは無手勝流であろう。 もうから平岡正明かよ、と呆れる身近な誰それの顔つきが、この上なく具体的に見える。見えるが、知ったことか。…

柳田國男 『青年と学問』

そうして現在この我々の目前に、政治と名づけて若干の或る個人の考えが、国民全体の共同生活の方向をきめること、またはこれをきめうる地位に立つ者を指定する選挙という仕事、あるいは経済行為と名づけてなるべく簡単な方法をもって、楽に自分自分に都合よ…